依存偏愛
胸が痛いのも、
こんなにも苦しいのも、
とめどなく涙が溢れ出るのも。
それはきっと、彼の優しさを利用したあげく、彼を傷つけてしまったからだけではない。
あたたかい、手。
私に向けられる、優しさ。
今まで、旭ちゃんとしか共有できなかったものが、ここにはある。大谷くんが、私にくれる。
そう思えてしまうほどに、私は大谷朔太郎という人物に近づきすぎてしまったのかもしれない。
旭ちゃんと離れたことで、心にできた隙間を埋めるように。もちろん最初は、旭ちゃんを大谷くんにとられないようにするためだけに、彼に近づいたのだけど。
この1週間、会わなかった時間で本当は気づいていた。でも気づかないようにしていた。だって私達には、誓いがある。そんな浮ついた気持ち、抱いてはいけない。
なのに私は、決して抱いてはいけないその気持ちを、抱いてしまった。
…――大谷くんが、好き。
それが旭ちゃんを本格的に裏切る行為だと、知りながら。
他の生徒が授業中の学校に背を向け、2人並んで歩く学園前通り。大谷くんに握られた右手が相変わらずあたたかくて、私の罪悪感を麻痺させた。
【CHAPTER:06/side*SHIZUKU/END】