4 X’mas story
その若者に恋をしたのがルチアだった。

ルチアは貧しいこの街で唯一、多少ではあるが医学を心得ていたため、診療所を開いていた。

ルチアは段違いにお人好しであった。

医療費もほんの少ししかもらわない。

目の前で転ぶものがいれば、自分の手荷物を放り出して、すかさず手を差し伸べる、
迷子の犬がいれば我が道を外してまで帰るべき場所を探してあげる、
そんな人である。

ルチアの目には、ユルネクもその迷子の犬と似たようなものに映ったのかもしれない。

と、私は思うようにしている。
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