4 X’mas story
それはルチアが夕食の材料を買いにいこうとしたときだった。

深緑色の帽子をかぶり、ぼろきれのような衣服を身にまとい、若いのにずいぶんとヒゲを生やした男が、ルチアに声をかけた。

「そこの方。あなたはとても美しい。きっと生き物や自然のものを大切にする人なんですね」

容姿が美しいことと、それと何の関係があるのか、まったく論理的ではないが、彼女はその男と会話を続けた。

「はい、命あるものは大切にしたいと思いますよ」

「素晴らしいお答えです。ところで、私は旅をしてましてね、あなたみたいな素敵な人に出会ったら、これを譲ってあげたいと思っていまして」

男は腰にぶら下げていた小さな袋から赤みがかった木の実のような、青みがかった種のような粒をとりだした。
< 8 / 65 >

この作品をシェア

pagetop