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言い慣れたようなリズムで発せられた挨拶は、きちんと店主に届いたようで、


「おー、メグルか。いらっしゃい」


こちらも口にし慣れた声色で、白髭の店主が奥にある画材倉庫から出てきた。

店主はメグルから俺に目をやり、同じように慣れた言い方で「ユヅルもらっしゃい」と笑った。



「そんで、メグルは何の用だ?」
「んー、絵の具買いに来た」
「この間買いに来ただろう」
「こないだは赤買った」
「そんじゃあ、今日は何色なんだ」
「白」
「白かあ」
「おいちゃんとこ白ないの」
「阿呆。あるに決まってんだろう」


ちょっと待ってろよと言い残し、店主は画材倉庫へと戻って行った。


メグルは手持無沙汰になったのか、近くにあった画用紙を眺め始める。

画用紙にもたくさん種類があるようで、メグルはひとつ手に取って眺めては、また違う画用紙へと手を伸ばす。


俺はその様子を入り口付近に立ったまま見やり、自分は買うものがなかったかと思考を巡らせる。





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