AM 0:00




ソファに腕をつき、上半身を起こす。

覗いたコーヒーカップの中には、まだ湯気の立ち上る、熱めの香ばしい飲み物が注がれていた。


「ついでくれたの」
「うん」
「めずらしい」
「なにそれ」
「これは雪降るね」
「うるせ」
「冗談。ありがと」


短いお礼を言葉にしながら、ソファに座り直してカップを手に取る。

そのまま口へと持っていき、カップを傾けてコーヒーをすすった。

舌に残るほろ苦さに、ほっと息をつく。


メグルの淹れたコーヒーは、いつも少しだけ濃い。

水を入れるのが面倒で、サボってるんだっていうことくらい知っている。


でもこの濃い苦みは、案外嫌いじゃなかったりするんだけどね。俺は。



「あ、風呂」


見ているのか見ていないのか、たぶん後者だとは思うけど、今までずっと黙ってテレビ画面を見つめていたメグルが、突然口を開いた。




< 32 / 45 >

この作品をシェア

pagetop