オオカミ少年

6話 帰り道

「委員長と副委員長は残ってください。それでは体育委員を終了します。さようなら」
とイジワルな先生の言葉。

私は下を向きながら荷物を取りに行くと、
「俺、廊下で待ってるから」
と逞が言った。

へ!?と逞を見るとニコッと私に微笑んだ。
待ってるから、って一緒に帰るってこと!?
そう思うと自然と笑みが零れた。
廊下に向かう逞の背中を笑顔で見つめた。

だけど、私は忘れていた。
「おい、何、ニヤけてんだよ」
竹内廉がいたことを…。
私は竹内廉を睨みながら、
「別に、ニヤけてないしっ!!ってか私を副委員長にさせるとか何考えてんの!?」と怒鳴る。
だけど、竹内廉は怯むどころか不気味に笑った。
「さっきも言っただろ?俺はお前が気にいったんだよ」
気にいった、
意味分かんない!!
何処が気にいったね!?ただ、からかってるだけでしょ、絶対!!
からかうだけなら竹内廉の事が好きな葵でもいいじゃん!!

私が心の中で竹内廉の不満をぶちまけていると、
「委員長、副委員長、こちらに座ってください」
と先生に言われ席に着く。
隣は竹内廉…、最悪。
私は竹内廉と少し距離を置いて座った。
「5月には体育祭っす。体育委員が中心として進めていくので」

長く感じた話は終わり私はいち早く教室を出た。

廊下には壁に寄り掛かって逞が立っていた。
「ごめん!お待たせ」
そう言いながら駆け足で逞の元へと行く。
「おつかれ。帰ろっか」
逞の優しい笑顔。
本当に一緒に帰れるんだ…。

私は逞の横を着いて歩いた。

逞の横顔…。
また、私の胸がトクンッと弾んだ。
恋って言うのは気づいたらその人を好きになっている、と言う奈美の言葉と、
彼の事で頭がいっぱいになって一緒にいるだけで幸せ、と言う葵の言葉。
…なんだか今なら分かる気がする。
それは私が今、恋してるから?

「ってか何?あの男」
と逞が口を開いた。
逞の顔を見れば、いつも優しい逞の表情はなく、眉間にシワを寄せて明らかに怪訝な顔をしている逞が居た。

あの男…?
頭の中を回転させれば、竹内廉の顔が浮かぶ。
きっと竹内廉の事を言っているのだろう。
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