オオカミ少年
総合の時間は終わり私は席に着いた。

「斎藤君、良かったね」
後ろを振り向き行きなりせんな事を言う葵に少し戸惑う。
「う、うん…」
それしか言う言葉しか見つからない。

「それに比べて舞は駄目駄目。斎藤君の事ばかり眺めてさぁ」
と呆れた顔で私を横目で見る。
「だって…、かっこよくて…」
そう。逞がかっこよくて見とれちゃったんだ。
「あんなんじゃ、舞が斎藤君の事、好っ」
葵が言い終わる前に口を塞いだ。

「ごめん」
と言う葵。
仕方なく許すと、
「さーて、どうする?舞の恋愛大作戦」とにやけた。
絶対、反省してない。
って、何?
恋愛大作戦って…。
「メアド聞くとか…」
そんなの恥ずかしがり屋の私に出来るかな…。

不安そうな顔だったのか、
「大丈夫、仲良いじゃんっ」
と言う葵。
…大丈夫かな?

「あ、斎藤君来たよ!!頑張れ!!」
と言い葵は私にガッツポーズをし前を向いてしまった。

どんどんと近づく逞との距離。
…言うしかない。
そう思い勇気を振り絞った。

「メアド教えてくだしゃい!!」
噛んだ…。
恥ずかしくて下を向けば葵がくすくす笑っていた。

「くだしゃいって…」
とクスッと逞も笑う。
…逞まで。
と拗ねていると逞は鞄を取り出した。

「いいよ。携帯出して」
と言い逞は携帯は私に向けた。
「え、あ、うんっ」私も慌てて携帯を出した。
そして至近距離で赤外通信をする。
逞の顔、近い…。
また私の胸がドキドキ脈打つ。

ピロリロリン♪
と愉快な音をたてて終了の合図を知らせる。
「はい、完了」
そう言った逞が優しく微笑む。
「あ、ありがと…」
私は後ろから葵を抱きしめた。
「葵~」
涙が出そうなのを抑えて声を振り絞る。
「良かったじゃーん」
と本気で喜んでくれる葵。

高校生活って楽しい。
楽しい恋もして、大切な友達もいる。

この輝かしい高校生活はずっと変わらないと思ってた。
< 23 / 57 >

この作品をシェア

pagetop