オオカミ少年
「…補習の時に急にキスされてリボン奪われて。今日も…」
目の前が少し霞んだ。

「…話してくれてありがとう」
優しく微笑んで私を受け止めてくれる逞。
…やっぱり私、逞が好きだ。

「…逞」

私が逞の名前を呼ぶと逞は私を強く抱きしめた。
初めて触れ合った体温。
思ってたよりも、ずっと細いけど逞しい背中にゆっくりと腕を回した。

ずっとこのままこうして居たい…。
そんな考えが頭を過ぎる。
だけど、それは無理で。
抱き合った二人はすぐに離れた。
私の顔が熱い。
自分でも顔が赤いと言うことが分かる。

「…俺が勉強教える」
「へ?」
思いがけない一言に思わずマヌケな声が出る。

「俺が勉強教えれば舞はアイツに会わなくて済むでしょ?」
逞の真剣な顔に本当に私を心配してくれていることが分かる。

「…いいの?」
遠慮がちに尋ねると優しく笑って、
「もちろん」
と逞が答えた。

「今日は帰ろ。送ってけよ」
「…うん」
二度目の逞との下校。
また私の胸はドキドキと高鳴る。
私は逞と少し距離を取って歩いた。

「…いきなり抱きしめてごめんね」
逞は、そう申し訳なさそうに謝った。
なんだか少し切なかった。

「…ううん」

すぐに私の家の前につき逞にお礼を言って家の中に入った。
私の心は複雑な気持ちだった。
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