出席番号1番


【本】(瑛斗視線)



「紗良、何読んでんの?」


今日の紗良は参考書じゃなくてカバーをかけた文庫本を読んでいた。


「夢十夜」


…聞いたことがない。

まあ紗良が読んでいるんだから少し難しめの本なんだろうな。


「へえ、誰の?」



軽い気持ちで普通にそう聞いたら紗良はすごくびっくりした顔をした。

…え?



「瑛斗、知らないの?」

「…聞いたことねぇ」



ていうか俺が本を知るわけがない。

つーか その夢なんたらってやつは そんな有名なわけ?
ベストセラー?だったら俺も名前くらいは知ってるはずだけど…聞いたことない。



「夏目漱石、だよ」

「………。ナツメソウセキ?」

「…もしかして夏目漱石知らな…」

「いやそれはさすがに知ってる!」



…………。

そんな昔の作家の本を読んでいる紗良にびっくりした。

つーか夏目漱石を国語の授業以外で読む女子高生がいるんだ…。



「小学生の時に初めて読んで…それ以来何度か読んだけど、たまにふと読み返したくなるの」

「……へぇ」


初めて読んだの小学生って…

高2ですら読んだことがない奴もいるってのにな、ここに。


「短編集になってるから。少しだけでも読んでみたら」

「お、おぉ」







埋めて下さい。

大きな真珠貝で穴を掘って。

そうして天から落ちて来る
星の破片(カケ)を
墓標に置いて下さい。

そうして墓の傍に
待っていて下さい。


また逢いに来ますから



(夏目漱石「夢十夜 第一夜」より抜粋)




「綺麗な話でしょ?」

「なんか…よくわかんねぇ。話の内容」

「………………そう」



何これ わかんねぇ!この展開どうなってんの?っていうか何が起こってんの?出だしからわかんねぇ!



「瑛斗って前回の模試、国語200点中何点だったっけ」

「9点」

「………なんか、ごめん」

「…いや」


呆れてる紗良の視線。

………俺もう一生本読まねぇ。





< 27 / 37 >

この作品をシェア

pagetop