ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

パーサーの部屋の前まで行くと、ドアが開けっ放しになっていた。

普段は閉まっているのに、珍しいかも。

中をじっくり覗いてみたい衝動を抑えつつ、声をかけてみる。


「岩谷です。お薬を借りに来ました」


「入りなさい」


「失礼します」


ドアは開けっ放しのまま、中に入れてくれた。


部屋の大きさは私達の二人部屋とほぼ同じ。

綺麗に整頓された室内に、パーサーらしさを感じた。


さかむけやひび割れに効くという液体絆創膏と、ハンドクリームを持ったパーサーが、ベッドに腰掛けている。

さっきとは違い、カウンター業務用の制服を着ている。

ドキドキした。


「手を出しなさい」


え? 塗ってくれるの?

素直に出すと、大きな手でそっと優しく薬を塗られた。


「少ししみるが、これで流血は避けられる」


「ありがとうございます」


「ハンドクリームは、少し時間を置いてから自分で塗りなさい。

下まで一緒に降りるぞ」


「はい!」


パーサーの部屋を出て、開けっ放しだったドアを閉めた。

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