ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

「ちょ、いや、それはだから、ただ岩谷さんとは趣味が合うから、一緒に映画を観るだけだって言ってるんだし……。

本当にそれだけだ!!」


「それだけだったと仮定しましょう。

でも、一緒に泊まるはずだった『ロイヤルステート』に、若い乗務員を誘い込んだということ自体、身重の奥様にとっては計り知れない衝撃になると考えられます。

私達乗務員は、そういった誤解を招かないため、勤務時間外はお客様のプライベートな空間には一切立ち入らないことという規定がありま……」


パーサーの言葉を遮り、工藤さんが低い声で言った。


「じゃあ、あんたは仕事上知り得た情報を使って、客を脅そうって言うのか?」


その言葉の意味を考えて、ヒヤリとした。

パーサーだからこそ、お客様がキャンセルされている事も知り得た。

でも、それ以外のことは……?


「お互い、あまり騒ぎを大きくしない方が得策だと思いませんか?

他の乗務員に気づかれる前に、ちょっと出ましょう」


パーサーが、工藤さんをAデッキまで誘導し、乗務員スペースから遠ざけた。

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