ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

そう聞いてみた途端、コウさんの表情が険しくなった。


「仕事中にすべき話ではない」


「す、すみませんっ」


慌てて謝ったけれど、私の手を離して、コウさんはどこかへ行ってしまった。

どうしよう、勤務時間にこんなところで寝ているだけでも大迷惑なのに、介抱してくれた上司を怒らせちゃった……。

私、やっぱり社会人としての自覚が足りなかったんだ。

あの夜の親しみやすい『コウさん』と、上司の『黒田パーサー』は違う。

今日、最初にそう忠告してくれたのに、つい……。


自分の甘さが情けなくなった。

コウさんが手を放したこともあって、気持ち悪さがぶり返す。

あ、ダメ、目を開いたら、吐きそう。


自分で腕組みをするようにして、さっきコウさんに押されたツボを探す。

そこを両手の親指で押しながら、目を閉じて船酔いに耐えるしかなかった。

< 57 / 332 >

この作品をシェア

pagetop