花嫁と咎人

無慈悲の晩餐


  ◇ ◆ ◇


「オーウェン様、どうやらここには居ないようです。」


人々の声でざわつく中、オーウェンは小さく息を吐いた。

ここは中央都市“アリエスタ”。

…どうやら先に越されたらしい。
もうここには女王と死刑囚らしき人物の姿はどこにも無かった。

流石に変装はしているだろう。
女王はともかく…死刑囚の方。

あんな長い銀髪でうろついたら絶対にバレる。
それなのに今までなんの情報も無いと言う事は、ほぼ100%変装しているに違いない。


「……厄介だ。」


唸る。
ここを出たとしたら、選択肢は2つしかない。
残るは南の毒蛇の森を抜けて4番街へ行くか…西にある砂の町“サザルツ”へ行くか…。
どの道選択肢は狭まる。

毒蛇の森へ行けば何人かは死ぬ。
サザルツへ行っても、あそこは無法地帯だ。

戦闘は出来るだけ避けたいが…。


「どうしますか。」


王国騎士団副団長に問われ、オーウェンは再び顎に手を添える。


…どうする。
どうすればいい。


どちらへ行っても予測できない事態に陥るに違いない。
だからと言って避ける訳にも…。

そして暫くの後、オーウェンは告げた。


「毒蛇の森へ行く。…犠牲者は出るだろうが…4番街へ行くには何倍も早い。」


そう、いち早く自分は女王を連れて帰らなければいけない。
あの男に負けないためにも。

早く、壊して貰わなければ。
この王国を…。



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