花嫁と咎人
Chapter.4

草原に咲く紫


  ◆ ◇ ◆


「―…っと。」


畑の一角。
慣れない手つきで農作業を手伝ってみる。

抜けたのは人参。

…今回はすぐに抜く事が出来た。

これなら、もう一本くらいはいけるだろう。

そう思って今度は大根に手をかけたが、


「う、」


力んだと同時に腹部に激しい痛みが走る。


「大丈夫か?」


赤毛の彼女に声をかけられるが、へなへなと座り込んでしまった。

嗚呼。何と情け無いのだろう。


「たかが大根も抜けないなんて…ああ。」


それから自己嫌悪に浸る。

金色の髪をくしゃっと掻きながら…彼…


…エルバートは息を吐いた。



―…遡る事数日前。

意識の戻った彼は苦悩の毎日を強いられた。

痛みで眠ることすら出来ず、動く事さえ出来ない。
何度も主を守れなかった事を後悔し…片目で何度も涙を零した。

心も痛み、体も痛む。

どうやら剣から菌が入ったらしく…刺された傷は何度も膿み…
それを拭う激痛と言ったら想像を絶するもので。

かつて主に褒められた紫眼。
だが既に右目は暗闇に閉ざされ…代わりに真一文字の傷跡だけが残った。


…そんな心も体もボロボロだった彼を献身的に支え、救ったのが…
この家に住む姉弟。


姉のコレット・キャンベルと弟のレネ・キャンベルだった。

< 181 / 530 >

この作品をシェア

pagetop