花嫁と咎人

―…時は悲劇の始まりに遡る。
見えたのは一見幸せそうな家族。

金髪の父、銀髪の母。
空を指差すのは…銀髪の子ども。


「おかあさん。見て、今日こんな本を読んだんだよ」


「“世界の人物史”?…まあ、ハインツは賢いのね。」


抱きしめられ、嬉しそうに笑う彼。


「きっと将来は、大物になるな。」


そんな二人を見守るように、微笑む父。


しかし、幸せな家族に…招かれざる客が来る。


ドアを叩く音、銀色の髪…血にまみれた剣。
倒れる父と叫ぶ母。

赤色の目と青色の目。



「知らぬ男との間に子供を孕むとは…つくづく下劣な女だな、アルベルタ…!」



最後に聞こえたのは、






「―…逃げて、ハインツ…!」







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