花嫁と咎人
溢れる涙が止まらない。
知らなかった、彼がそんな人物だなんて。
それ故に、自分が小さすぎると思った。
いつだって私は自分の事ばかり。
それなのにハイネは私を救い、私の為に一生懸命だった。
…なんて馬鹿なの。
私は…本当に愚かだわ。
もう26日しかないのに。
お姉様も、ハイネの身も危ういのに…。
「わ、たし…本当に情けないわ…!あなたがこんなにも、…んん、!」
だが、言いかけた途端…優しいキスで口を塞がれてしまう。
驚いて目を見開く私。
そして静かに彼の腕の中に引き寄せられて。
「悲しませる為に、話したんじゃない。」
「…、」
「本当は…最後まで話さないつもりだった。只でさえ追われている身なのに…これ以上フランに負担をかけるわけにはいかないと思ったから。」
ぎゅうっと力が強まる。
「それに、元々同情されるのは嫌いだ。でも、もう耐えられなかった…。期限が迫る度に…嫌な夢ばかりを見る。早くしなければと思う度に、どうしていいのか分からなくなって、」
初めてハイネの弱さに触れた気がした。
こんなにもか細い声を、今まで聞いた事がない。
彼もまた、限界が来ていたのだ。
平然を装う仮面の下で、足掻いて、もがいて…一人、孤独と耐えていた。
また、溢れ出す涙。
「大丈夫よ、ハイネ。女神様はきっと…あなたに微笑んでくださるわ。」
月が私達を照らして。
「こんなにも頑張っているもの。」
風に吹かれ、踊る木の葉。
「見捨てるはずがないわ。」