花嫁と咎人
事情を知らないエルバートは、私の腰から剣を抜き、
「…貴方が、姫様を誘拐した死刑囚ですか…。」
ハイネに突きつけてはそう断言。
「初対面の奴に向かって剣突きつけるってのが、どう言う事か知ってんのかよ。」
対してハイネもサーベルを抜き取り、構える。
「ま、待ってエルバート…!ハイネは、」
しかし私の言葉も空しく、エルバートは私を自分の背中に隠すと…本格的に剣を構えた。
「フランはアンタのモンじゃねぇだろ。…返せ。」
舌打ちをするハイネ。
「…勿論貴方のものでもありません。姫様を危険な目に遭わせた罪、ここで償って頂きましょうか。」
エルバートは彼を睨んだ。
「だ、駄目よエルバート!あなたは怪我人なのよ!それに誤解しているわ!」
慌てて止めに入る私だけれど、
「ハイネもハイネよ…!エルバートは敵ではないことを知っているでしょう…!」
出会った二頭の獣は…誰にも止める事が出来なくて。
「危険です姫様。この不届き者は、私が必ず。」
「引っ込んでろフラン。言ってもわかんねぇ奴にはこうすんのが妥当なんだよ。」
「だ、だから…!」
私の言葉は全くの無意味だった。
「…罪人に他言の余地など、ない!」
そしてエルバートが叫び、ハイネに向かって剣を振り上げたその時。
「エルバート!」
…とっさに体が動いて、私は振り下ろされる剣の前に立ちはばかった。