花嫁と咎人

  ◇ ◆ ◇


ザーッ…
ザ、ザー―…。

ボコッボコッ。


途端、一人の男が頭を抱えて叫んだ。


「ちくしょー!マジで壊れた!この前修理に出したばっかりなのに…!」


何度も黒い箱のような物体を叩いては、あーあーと唸る。

するとその時。


「アンタがそんなポンコツ買ってくるからでしょうが。」


椅子に座り…タバコをふかす女性がフンと鼻を鳴らした。
その女性はブロンドの髪を後ろで一つに結い上げ、派手な色の口紅…派手なフレームの眼鏡をかけて。
服装はカッターシャツにズボン、黒いブーツと、なんともシンプルな格好をしていた。

そんな彼女は磨いた一眼レフカメラを丁寧に置き…男に目を向ける。


「大体、ガラクタ屋に売ってるラジオが不良品ばかりってこと…あんたも知ってるでしょ?」


「ですけど…だってこれ最新のレディック社F05型コンパクトラジオですよ!?こんなのが安値…そう、2万イースで売ってたら普通買いますって!」


唾を飛び散らしながらその男は力説する、が。


「…でも、ガラクタ屋、ね。」


女に言われてガクリと膝を突いた。


「おれの、おれの…2万イース返せぇぇぇぇええぇ!」


だが、そんな彼に気にも留めず…女性は机の上の新聞を見ながら小さく唸る。

そして、一言。


「あと、26日。」


すると膝を付いていた男が、その新聞を覗きにやってきて。
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