花嫁と咎人

「…車、また取材ですか。」


男は渋々外に出ていき、2、3分後。

ガラス戸越しに、排気ガスをムンムン出したポンコツの茶色い車が前に止まったのが見えた。

トレンチコートを片手に外に出る女性。

海岸際、広がる芝生。
隅の車庫に一台止めてあるプロペラ機を確認して、扉の鍵を閉めた。


そして車に乗り込むと、


「さて、今日はアンダーレスリバーに行くわ。」


ふっと口元を歪める。


「…ちょ、編集長。そこって盗賊団ヴァルドヴァレスのアジトじゃ…!」


「取材に危険はつき物よ。さあ、アクセル全開!」


「えぇえあ、痛あああああ!」


いやな顔をする男の足を思い切り踏みつけ、ポンコツ車は道を行く。


彼等が去った後のその場所。

海岸沿いに佇む四角い建物のその上にある大きな看板には、



“アンバーシュタイン新聞社”



と書かれていた。



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