花嫁と咎人

「…行ってくるよ、フィレンツィリア。…故郷に。」


小さく微笑みながら、大草原に駆け出していった。


「……行ってらっしゃい、オズ。」


そんな後姿を見守る私と、微笑むハイネ。

彼は私を抱き寄せるようにして自分の側に私を寄せると、
まだ少し潤んだ目で私を見つめて言った。


「アイツなら、きっと…大丈夫だ。」


優しい笑顔。
―…さっきまで泣いていたのが嘘のように。

本当は崩れてしまいそうな心を、必死に取り繕って。


「…無理、しなくていいのよ。」


そんな彼を見た途端、零れてしまった私の本音。

それでもハイネは―


「もう…過ぎた事だから。」


少し眉をひそめたまま…笑って。

本当はまだ辛いはずなのに。

私の前では笑っていようだなんてきっと思ってるんだわ。

強がりで、意地っ張りで、強情で…あなたは本当に…


「…馬鹿ね。」


私はそんなハイネの胸の中に顔を埋めると、


「……世界で一番、あなたはお馬鹿さんだわ。」


静かに泣いた。

彼の分まで、オズの分まで…勿論私の分も。
泣かない人たちの為に、静かに泣いた。



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