花嫁と咎人

「…はあ?何言ってんだよ、死ぬつもりか…!?」


俺がそうキツく言っても、二人の意志はもう変わらないらしい。


「…女神様の家から、離れるわけにはいかねぇ。」


何度も首を振り、涙を溜めては、


「それに…王子様を置いてはいけねぇから。」


無理やり笑って。


俺は只、無言になる他なかった。
それ以上に…この子ども達の強さに感服した。

下手すれば、自分よりも強いかもしれない。

…俺は小さくそうか、と言うと馬を繋いだ縄を剣で断ち切った。


「生きて…また会おう。…エルバートにもそう伝えておいてくれ。」


「…ああ。約束だ。」


そして俺は馬の綱を引き、朝日が昇り始めた大草原を駆け抜ける。

背後に見えるあの家。
一度だけ振り向いて、フランを抱きしめた。


「頼むから、死なないでくれ…!」


血だらけで、痛みに眉をひそめる彼女。

絶対に失いたくない。
一国の女王としてではなく、愛する人として。

フランをこんな所で失いたくない。


せっかくここまで辿りついたのに、ようやく終わりが見えてきたのに。

まだ、話せていない事が沢山あるのに。


「……フラン、」


するとその時、フランの手がゆっくりと持ち上がり…俺の頬に触れて。


「…泣か…な、いで」


知らぬ間に泣いていた、俺の涙をそっと拭う。


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