花嫁と咎人

  ◇ ◆ ◇


―――パキン。


「あ」


エルバートは一人、手の平を見つめて声を上げた。

そう。
そこにはガラスで出来た黄色い花の髪飾りがあって。

だがその花弁は真っ二つに割れ…無残に散っていた。


「割れてるじゃないか。」


そんな髪飾りをタリアが覗き込み、口を開くと…


「今割れたんですよ。」


エルバートは怪訝な顔をした。


それにしても、突然亀裂が入って割れるなんて…
妙な胸騒ぎを押し込めるように、彼は息を呑んでそれを見つめた。


「これ…昔姫様に頂いて、剣につけておいた物なんです。とても丈夫だったのに。」


今まで何度落としても割れる事のなかったガラスの花。
それが今…突然割れたのだ。


「…不吉だね。」


タリアは眉をひそめて言う。

頷きながら、


「…姫様、」


エルバートはその花をぎゅっと握り締めた。



  ◇ ◆ ◇


15日。


―…割れた花は、騎士に語る。


  ◇ ◆ ◇


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