花嫁と咎人


“親愛なる姫様へ。

この手紙を貴女様が読む頃には、きっと…世は変わってしまっているでしょう。

私はこの数十年間、国の為に尽くして参りました。
しかし私の力をもってしても、強大なる悪の前では全く歯が立たず…結果何も出来ぬまま、この国を滅亡へと導いてしまった。

国王様や王妃様を救うことすら出来ず、また、貴女様までも危険に晒してしまった。

本来ならばこの命を投げ捨ててでもお詫びを申しあげたいのですが、それすらも出来ぬ自分が悔しい。

どうかこの老いぼれを笑ってやって下さい。
この情けない私を、軽蔑して下さい。

私は何の価値もない…ただの老人です。


しかし大変厚かましくも、私は姫様の事を心よりお慕いしておりました。
時には友人のように、あるいは家族のように接してくださる、優しく明るい貴女様の成長を、お側で見守っていたかった。

貴女を愛しております。
どうか貴女に女神の加護があらんことを。


サミュエル・オンド・クロイゼング”


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