花嫁と咎人

泣きそうな顔で目を開ければ、


「っ、!」


目の前には蛇の顔があって。

私は痛む体を引きずるようにして、後ずさった。

周りを見渡してみても、蛇、蛇、蛇ばかり。

いつの間にか私は蛇に囲まれていた。


「…そんな、」


木の上に逃げようにも体が痛んで動かないし、もしかしたら木の上にだっているかもしれない。


…嗚呼、どうしよう。


生憎丸腰で、何も持っていなかった。

剣を借りて置けば良かった?

だが、もう既に遅い。


蛇は腹が減っているのか、今にも飛びつきそうな勢いで私を睨み、舌を出す。


嗚呼、正に蛇に睨まれた蛙そのもの。
背中に木の幹が当たった時、もう駄目だと思った。


が、


「きゃあ!?」


突然何かが私の前を駆けたと思った瞬間、物凄い勢いで腕を掴まれたのだ。

そして「痛い」と言う暇さえ与えてくれぬまま…その人物は私を走らせて、


「何やってんだよ馬鹿!」


そう叫びながら先で待機していた馬の背中に私を放り投げる。


それからその人物も素早く馬に乗り込むと、


「やあっ!」


馬を走らせた。



< 432 / 530 >

この作品をシェア

pagetop