花嫁と咎人

でも、何故だかそうしろと言われているかのようで。

とても不思議な感覚だった。


「………。」


私は自分を落ち着かせるように小さく深呼吸をすると、最後に彼女のアルバムをぎゅっと握り締め、部屋を出る。

部屋の中央にあるソファーではまだジィンが眠っているだろうから、起こさないよう静かに1階に下りるつもりだったけれど…


「…どこ行くのかな、っと。」


思いがけず右方向から声が飛んできた。


「!」


慌てて私が目を向けると…ジィンが壁にもたれかかったまま、こちらを見ていて。


「…ジィン。」


ぶつかる視線と高鳴る鼓動。
彼女は大きな欠伸を一つ落とすと、頭をくしゃりとかき…視線を戻す。


「アタシに内緒で外出ですか、へいへい、そうですか。」


それからそう口を尖らせて、舌打ちをすれば、


「でも、理由を言ってから行ってくれると嬉しい。」


真剣な口調でジィンは言った。


―…理由。
それは、実に簡単な事で。


「…ハイネを助けに行くわ。」


「………。」


「この国の、女王として。」


ただ、それだけの為だった。


「んな事分かってるよ。アタシが聞きたいのは、フランが一人で行く理由。」


でもジィンはフンと鼻を鳴らし、私に指を突きつける。
きっと『どうしてアタシに内緒で行こうとしたのか』という理由が聞きたいのだ。




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