花嫁と咎人

『愛しているわ、フランシーヌ。』


「…お母様。」


そして彼等が消えるのと同時に私は唇を噛み締め…通路の先へと足を進めた。

奥にある扉から零れる光。
どうやらそれを見る限り、この通路の先は外。


つまり…、広場へと繋がる秘密の通路だ。


一歩、また一歩歩く度に、聞こえる人々の声。


『罪人には死の裁きを!』


響き渡る、ラザレスの叫び声。


『我等がエスタンシア王国の平和を祈願して、さあ、今こそ死刑囚の断罪を行おうではないか!』


嗚呼、なんて馬鹿馬鹿しい。

平和?
断罪?

そんな事を言う資格を、あなたに与えたつもりは無い。

私は歩く。

ゆっくりと、全てを終わらせるために。

そして



「―…ハイネ、あなたを救う為に。」



終に。















午後0時の鐘が鳴った。








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