花嫁と咎人


憲兵達を掻き分け、手を伸ばし…今まさに断頭台にかけられようとする死刑囚の腕を、彼女は一目散に掴んだ。



まるで、抱きしめるかのように


強く…腕を引いて体ごとその弱く細い腕で包み込んだ。



一気に静まる会場。



驚きに顔を歪めるラザレス。



「女王、陛下…!」



オーウェンは目を見開く。



全てがスローモーションに見えた時、女王は、





「こんな事をしてまで、王座が欲しいのですかシュヴァンネンベルク公。」





彼を抱きしめたまま、憎むべき悪を睨んだ。




「かつての国王を殺め、后を殺め…私と言う邪魔者までをも殺そうとして…。
これで国を支配できると思ったら大間違いです。

あなたのしている事は、もはや只の人殺し。只の殺戮。
ここで死すべきはハイネじゃないわ!そう、ここで死ぬのはあなたの方!」



突然の乱入者とその証言にざわつく会場。

ラザレスはそんな彼女を見て一瞬だけ驚きの表情を見せたが、やがて大口を開けて笑うと、



「…貴女は一体何処の町娘かな」



冷ややかな視線で彼女を凝視した。


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