花嫁と咎人

花嫁と咎人


―…
――…
―――…

フィレンツィリア王国。
王宮前第一通り。


『国王陛下万歳!』


『王妃様!』


沢山の歓声に応えるべく、私達はゆっくりと動く馬車の中から手を振り続ける。

初めて見る異国の地。
見慣れない機器や、服装。

聞き慣れないフィレンツィリアの言葉。

全てが新しい環境の中、私は必死にそれらに追いつこうとしていた。


けれど、そんな時。



「―…なぁ。」



突然、ハイネが口を開いた。


「?」


不思議に思って振り向けば、前を見たままつまらなさそうに手を振り続けるハイネの姿があって。

どうしたのだろう。
何か不満があるのかしら。

華やかな場で彼の態度は少し不謹慎だと思いながらも、少し、不安になる。


だが彼は、こんな事を言い出したのだ。


「こんなの、普通過ぎるだろ。」


「…え?」


一体、彼は何を考えているのか。

普通すぎる?
その意味が理解できない私は、


「普通?…これの何処が普通なのかしら。」


思わず反論してしまう。


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