花嫁と咎人

城がある場所とその城下町が1番街。
その次の街が2番街。
そこから大きなオーダ川を挟んで向こう側が3番街。
3番街の向こうが4番街。
4番街の終わりから海岸線までを5番街。

1番街の城下町入り口付近の看板を見て、私たちは始めてこの国の造りを知った。


「…案外単純だな。」


ハイネは簡単そうに言うが、私は何度も首を傾げては唸る。


「わ、分からないわ…まるで暗号よ…」


どうやら私には地理学系統の才能は無いらしい。
何度見ても覚えられず、きりが無いので、引き続きハイネに着いていくしかないようだ。


「いいか、街中ではあくまでも俺達は憲兵。…変にビクつくなよ、フリでも堂々としてりゃいいんだ。」


街に入るなりハイネは何度も私に念を押す。
ここで足手まといになるわけにはいかない。
無言で頷き、少しだけ胸を張って歩くが…これでいいのだろうか…。


そう疑問を抱きつつも、足を踏み入れた1番街。
やはり城下町だけあって活気があったが、どこを見ても高価な服を着た身分の高そうな人達が行き交っていた。


「1番街は金持ちばかりが住んでるらしいな。」


ハイネも気づいたようだ。


「それに他の街と比べて1番街の規模は極端に小さい。…姫さん、アンタの国は貧富の差が激しいって証拠だぜ。」


そして彼はそう小さく私に耳打ちする。
私は反論など勿論出来ずに、唸るだけ。

…無知な自分が凄く恥ずかしい。

それと私はもう一つ、ある事に気がついた。

ここの人達は、皆元気なのね…。

そう、以前エルバートが言っていた病“緋色の死神”の事。

彼方此方で広がっていると聞いていたが、ここにいる限りそんな話はまるで嘘のようだ。
皆生き生きしていて、とても良い表情をしている。

一瞬またもやエルバートの証言を疑ってしまったが、2番街へ入った途端…彼の言葉が嘘では無かったと確信した。


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