蜜蜂
.





彼女の頬を伝う涙を指で拭いながら、少しだけ首を傾げ尋ねる。
ピクリと肩を震わす彼女。
小さく息を呑むのが聞こえた。
視線がぶつかる。



「…好き、だと思う……」



呟くように言う彼女に、俺は吹き出す。


「なに思うって。確信してないの?」


彼女の頬に触れたまま、俺は下からのぞき込むようにして尋ねた。
すると、


「だ、だって、ヒカリくんに言われるまでわかんなかったんだもん。」


と、頬を少し膨らませながら答えた。


「で、言われてわかったんでしょ?
はいもう一回。」


笑って返す。
彼女は涙目で顔を真っ赤にして、俺を睨んだ。


「…好きです。」


「ははっ」


睨みつけながらも敬語な彼女に、俺は嬉しくて笑った。







傷ついてもいいと思うのは、大切だから。
「君のためなら」と、思える君がいるから。

君に視界を奪われた時から、君が大切だったんだよ。






真っ赤な顔の君に返す。



「俺も好き」




<end>


.
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