If not...




イール…

イール、ありがとう!


イールの中には、まだちゃんと私がいるんだね。

それだけで、もう十分だよ。




「その涙は決意?」




「…ヒック…ッ…そうかもね。」




「それじゃあ、答は出たのね?」




「うん。」




涙は勝手に溢れてくる。


悲しいのか、嬉しいのか、辛いのか、幸せなのか…

複雑に混ざり合った感情が、涙となって零れていった。




「イールが誰かを思ったように、私も誰かの為に願いたい。」




ホープは何も言わず、サーシャの言葉を聞いた。




「イールと家族を会わせてあげて。」




「あなたは、イールに会えなくてもいいのね?」




「イールは私を思って、世界平和を願ってくれた。それだけで充分。もう心残りはないよ。」




「そう…。」




心なしか、ホープの声音が変わった。

いつもの単調さが崩れていた。



サーシャは両手を組んで祈った。




「どうか、イールが家族と再会できますように…。」





そうして、サーシャは真っ白な空間に呑まれるように姿を消していった。



幸せのままに…




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