王子様はご主人様!?


「おいっ!!」



「えっ……輝くん?」



振り向いた成田の目には、うっすらと涙の痕が見えた


加賀のヤツなに、泣かしてんだよ……



「花梨は知ってんのか…。」


「えっ?」



「加賀と付き合ってるって」



「っっ…!!」



目を大きく見開き、俺を見る



「な…んで……」



「さっき図書室で聞いちゃったから…」


「あっ……」



困ったような表情の成田


「別に誰にも言う気ないから。」



そう言うとホッとしたように、息を吐いた


「…花梨には…まだ話してないの……」



小さな消えるような声


「……なんで?」



「なんでかな…?ちょっと怖いのかも……」



……怖い?


「ってか、輝くんもけい…加賀先生に用事があって来たんでしょ?」



「あっ。」



持っていたプリントを見つめる


「あたしもちょっと一人で落ち着きたいから……」



そう言って離れていこうとする成田



「ちょっと待てっ!」




このままでいいのか…?


他人のことなのに、この事で花梨が悲しむと思ったら無意識に呼び止めていた



「教室にいろ!」



「は?」



「やっぱりあんたにはちゃんと事情を聞かないといけないと思う。」



……花梨のためにも。




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