迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*

ひとりの夜





「……どうしたの!?」



ドアを開けて。

私の顔を見るなり、茉奈は目を見開いた。



「何があったの?」



きっと、ひどい顔をしているんだと思う。

走ってきたから呼吸は乱れてるし、髪もボサボサだし。

何より…



「とりあえず、中に…」



よっぽど驚いたらしく、

あたふたとした動きで私を玄関へと招き入れる茉奈。



「ごめ…っ、急に…」



申し訳ないと思いながらも、うまく声が出ない。



「いいから。いいから。
ほら、上がって?」



そんな私の手を引いて、部屋の中へと促しながら、



「みさきが泣くとこなんて…私、10年ぶりくらいに見たよ。」



茉奈はぽつりと呟いた。





……そう。



私の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。



逃げるように部屋を飛び出して。


駅に戻って。
電車に乗って。


そのあたりからは、もうほとんど覚えていない。


途中、先輩に呼び止められたような気がしたけど…


周りなんか見えなかった。



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