迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*

今の私にできること




「みさき!」



バイトを終えて、図書館を出た。

暗くなった空の下、歩き出そうとした私を呼び止めたのは…



「…茉奈?」



振り返ってみれば、

ケータイ片手に笑顔で手を振る茉奈がいて。



「おつかれさまっ。
ちょうどよかった。今、メールしようと思ってたんだ。」



言いながら、こっちに駆け寄って来た。



「え…?どうしたの?」



私がバイトを始めてから、茉奈はちょくちょくここに来ていた。


“心配だから”なんて、保護者みたいなことを言って…ほぼ、毎日。


だから珍しいことじゃないんだけど、こんな時間に来るなんて…


あ…、もしかして私、
約束とかしてたんだっけ?

あれ…?



「ごめん、茉奈。私…」



先に謝っておこうと思ったのに…



「ご飯、食べに行こう?」


「…へ?」


「あとはもう、帰るだけでしょ?」



ケータイをしまいながら、無邪気に言う。

そりゃ、そうだけど…



「じゃあ、決まり!さ、行こう!」



私の返事も待たずに、さっさと歩き始める茉奈。

…まったく。



今日は、そんな気分じゃないんだけどな――



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