風になれ
有無を言わさず私は優子を連れて
ずんずかとコートに戻った。
審判さんもおろおろしながら席に戻る。

「野風、無理してるでしょ。
それ絶対痛いでしょ?」

優子が半分怒ったように言う。
確かに腕からも脚からも
血が流れてて見てるだけでも痛々しい。
ちょっと動かすだけで全身激痛だし。
けどね!

「もうそんなん言ってる場合じゃない!
勝つって決めたんだからやるの!!
私が痛くないって言ってんだから
痛くないの!!!」

コート中に響くくらいの私の大声に
優子はため息をついて

「わかった。
…ほら、サーブは野風だよ」

とボールを渡してくれた。

優子の理解も得たところで
私は位置についた…のだけど…
………やっぱり痛い。
これは、アンダーサーブしか出来ない。
まだ不安の残るカットサーブ。
出し惜しみしていたら
ここまで来てしまった。
アンダーサーブをするなら絶対カット。
だけど…
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