風になれ
パンッ

大きな破裂音が
小さなトイレにこだました。

「ちょ、ちょっと伊久ちゃん!?」
「黙ってて!」

私のなだめ声を
伊久ちゃんはまたも
ヒステリックな声で止めた。
そして深呼吸を大きくすると
まっすぐ私の目を見て言った。

「…みーちゃんがね
 部活をやめるんだって」

言ってからすぐ
伊久ちゃんは南の方に向き直った。

「伊久ね、許せないの。
 伊久は真剣にテニスやってきた。
 伊久だけじゃない、みんなもだよ。
 みんな、先輩に嫌なこと言われても
 …野風なんていじめられても
 ここまで頑張ってきたんだよ。
 それなのに
 『理由はないけどやめたい』
 なんて言うみーちゃん
 信じられないし許せない。
 そんなの、みんなに対して失礼過ぎる」
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