キミの手の奥の僕

No.1




自転車をこいで、桜の咲く並木道を急ぐ。





ピンク色の花びらが私の目の前をふわふわと舞う。




冬が去り春が訪たはずなのに、まだ少し肌寒く乾いた風が頬に当たる。




ピロロロロ…



携帯が音と共にポケットで振動する。





私は右手でハンドルバーを握り、左手で携帯の通話ボタンを押した。




耳に当てて声がするのを待つ。





すると、ガヤガヤとした雑音の中一人の声が聞こえた。






「香世~?今どこらへん?」





電話の相手は友達の沙和から。




「えっとねー、あの桜の並木道」






「はあ~?もうすぐ入学式始まっちゃうよ?」




私はその言葉に慌てて時計を確認した。



あと3分で入学式。









< 2 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop