夜色オオカミ
あたしの言葉に十夜は目を見開いてあたしの…きっと赤いはずの顔を見つめた。
「誰よりも真神を大切に思ってる十夜が…今、辛くない訳ないでしょ?
あたしにまで、無理して『若様』しないでいいよ………。」
「…………っ!!」
「さっきはちょっと驚いたけど、皆にあんなふうに釘を刺したのだって…
十夜はどこかでまだ…紫月さんを信じてたいからなんじゃないかな……。」
十夜は一瞬
泣きそうに顔を歪めたけど……ぐっと歯を食いしばって、苦笑した顔を見せた。
「………祈咲……」
「何……?」
あたしの頬に手を伸ばして……そっと触れた。
あたしの好きな夜色の瞳が眩しそうに細められた。
「死ぬほど、………好きだ。」
「……っ………あたしも……。」
優しく微笑む十夜の唇に
小さなキスを落とした…。