夜色オオカミ
「………さ……祈咲!」
「………!?」
突然かけられた声に、思わずビクッ!と震えた。
ハッとして振り返れば、あたし以上に驚いた顔の十夜が立っていた。
「大丈夫か?ずいぶんぼんやりしてたぞ。」
十夜は少し苦笑すると、机の上の殆ど手のつけられていないプリントに視線を移した。
「……ここ間違ってる。」
「………っ。」
そうして、問題を指差すとニヤリと笑った。
たったこれだけしか手をつけてないうえに間違ってるとか最悪。
ぼんやりしすぎの自分に思わず小さなため息が出た。
「………。
…教えてやるよ。」
「え…っ!」
十夜はあたしのシャーペンを奪うと、学校の先生よりも丁寧に解りやすく教えてくれた。
「十夜すごい……!先生よりわかりやすいよ!」
あたしはびっくりするくらいすんなりと理解出来た問題にちょっと感動する思いで、
優秀すぎる先生に笑顔を向けた。
十夜は切れ長の黒い瞳を優しく細めて、あたしの頭にそっと手を置いた。
「…こんなことくらいでおまえが喜んでくれるなら、いくらでもしてやるよ。」
「………!!」