夜色オオカミ




「祈咲ー?……いい加減顔見せてくれよ…?」



「…………。」



頭から布団をかぶるあたしの…頭の上からかかる、十夜の困ったような面白がってるような、…そんな声。



だって、どんな顔見せればいいの……っ?



身体中に散る紅い痣を見るだけでも顔から火でも噴きそうなのに。



十夜の顔なんて見たら死ぬかも知れない。



恥ずかしくて



幸せで……あたし、










泣くかも知れない。













どうしよう…
どうしよう…



…幸せだ。











「…また泣いてんなよ…。」



「………っ!」



痺れを切らせた十夜が布団をめくってあたしの顔を覗き込んで、『おまえほんと泣き虫な?』…そう言って優しく笑う。



その優しい瞳にもあたしの涙腺は緩む。



この人の傍は、なんでこんなにも上手に息が出来るんだろう…?



なにもかもを受け入れて、すべてを包んでくれる人……。



十夜…。



「泣いた顔も可愛いけどな……。

笑えよ……?


…笑った顔が、いちばん好きだ。」



「………っ!」









あたしが見せたのは、泣き笑いの変な顔。



それでも十夜は可愛いと言って笑う。










幸せ過ぎて忘れてしまいそうだった。











紫の狼は……もうすぐそこに迫って来ていた。








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