夜色オオカミ
「君の本当の父親は、
真神の歴史から消えた黒き狼……
…真神咲黒だ。」
「………。」
その静かな告白に、十夜は驚かなかった。
そっと瞳を閉じて、予想していたその真実を自分の内に飲み込んだようだった。
だけど、
「…そして、真神咲黒は……
私の、実の兄なんだよ。」
「………え…?」
予想だにしなかったその言葉には
あたしと共にお父さんを見つめて動けなくなった。
お父さんはあたし達を見て優しく微笑むと
「小さな頃はよく君に昔話をしてあげたなぁ……。
久しぶりに昔話をしようか……十夜。
君の生まれる前、そして生まれた…16年前の話を――」
そうして穏やかに…まるで小さな子供に絵本を読み聞かせているように……
十夜の実の父親だと、自分の実の兄だと言った……《真神咲黒》の話を話し始めた。