夜色オオカミ




「………!」



食わえた一輪の血染めの白百合を…十夜が紫月さんの足元に落とすと、紫月さんが追いかけるように百合を見つめた。



百合はまるで月のような青白い光を放ち、ポウ…と淡く輝いて見えた。



そして次第に光は膨張を始め…百合の上に徐々に人の形を型どってゆく…。



きっと誰もが…息を止めてそれを見た。



「……っ……まさか………本当に………」



呆然と零れた紫月さんの呟き








目の前には








ゆらりゆらり…揺らめいて、半透明なその姿――



淡く光り、消えてしまいそうなほど白く儚い……










『………やっと…逢えた……。心花の…オオカミ……』



「………!!!」










柔らかな笑みを浮かべた…











――――彼の花嫁………。











「心花………!!!」









< 408 / 472 >

この作品をシェア

pagetop