夜色オオカミ
まるで電池が切れたおもちゃのように
十夜はその一切の動きを止めた。
「………っ!!」
怖い
怖い
怖い
明け始めた空…
むせかえるような鉄錆びの匂い…
真っ赤に染まった両の手…
あまりにも穏やかな顔で《眠る》十夜…
「ね…ぇ……起きて……。とぉ……っ」
うっすらと開いた唇に…自分の唇を押し付けた。
…大丈夫だ。
だってまだ温かい。
だけど
「ど…して……何も言って、くれないの…?」
頬に触れれば、赤い手がまた新たに十夜の頬に血の跡をつける。
十夜の血だ。
こんなにたくさんの。
「血が…足りないの……?
だったら…あたしの血をあげるから……っ
ねぇ…!!?
起きて笑って……!!!
十夜あぁっっ!!!!」
この悪夢が
――――あたしをまっ逆さまに絶望へと突き落とす。