いちごいちえ

夏暮





結局この日は、日付を跨いだ頃に、ようやくお開きになった。


やけに私と瑠衣斗に気を使ったみんなに対して、私は瑠衣斗の両親に顔向けができず、赤くなって俯くばかり。


でも、そんな私を見て、おじさんとおばさん、更には慶兄までもが楽しそうに笑いかけてきた。


「ももちゃん。瑠衣は頑固だから、困ったらうちに家出しにおいで♪」



「大歓迎だぞ〜。連絡くれれば迎えに来るからね」



全く気にもしていないどころか、まるで喜んでいるような笑顔に、恥ずかしさでどうにかなりそうな程赤くなる。


やたらと家出、家出と言われ続け、私を歓迎してくれているんだと思うと、とても嬉しい。


改めて、本当に瑠衣斗と付き合ってるんだな、なんて思うと、少しだけ不思議な感じがする。



「むしろ、海渡ってきてもいいぞ」



「あの…ありがとうございます」



慶兄の言葉と、おじさんとおばさんの言葉に対して、そう言って笑ってみせる。



「だははは!!おいもも!!るぅがすっげえ顔してるぞ!!」



「えっ、あ…」



「うるせー。ほっとけ」





しまった。

またやってしまった。



ハッとして見上げると、不機嫌さを全面に押し出したような瑠衣斗に、顔がひきつる。


この後、また2人きりになるのかと思うと、少し恐ろしい。



「るぅちゃんかーわいっ♪ホント分かり易いんだから〜!!」



「うん、やっぱりるぅはそうでなくちゃだな」



「お前ら…夫婦になってから益々似てきたな」




嫌味を言ったはずの瑠衣斗の言葉さえも、美春と俊ちゃんは笑顔でかわす。


そんな様子に思わず笑ってしまうと、目を細めて見下ろしてくる瑠衣斗とバッチリと目が合い、慌てて目を逸らした。



「もも、るぅに当たられたら慶兄の所に逃げろな〜」



「う……うふふ」



宗太の言葉に危うく頷きそうになり、無理に誤魔化してみたがやっぱり瑠衣斗に睨まれてしまった。


そんな私と瑠衣斗を、みんなが穏やかに笑っていた。
< 204 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop