素直になること

同じクラスになったのは中学一年生の時だった。
あたしは新学期でドキドキしていたことをよく覚えている。

あたしの名字は沢野。
最初の席の後ろには志乃絵理が居た。
あたしは友達ができるかがすごく心配だった。
あたしはもともと、友達は少ない方では無かった。
クラスにも数名小学生から仲の良い友達が居たから安心だったのだが。
間違えたのは次からだった。
黙って小学生時代の子と仲良くしていればいいものの。
あたしが新しい友達を求めたせいで、昔の友達とは一緒に居ることは無くなった。
と、いってもあたし的には常に絵理と行動を共にしたかった訳では無かった。

絵理と一緒に居るきっかけとなったのは、あちらからの積極的なアピールだった。
初めに後ろの席だったからかひんぱんに喋りかけてくれていたのだ。

もちろん、絵理は顔が良かったし、男子からも女子からも結構な人気があったので
一緒に居る事にたいして不満は無かった。むしろ求められている事に喜びさえ感じていた。
しかし、絵理はあたしを捨てたのだ。
悪口というモノは恐ろしい。あっという間に広がってしまう。
『理子―。絵理が理子の愚痴言ってたよ??』
今思えばその愚痴を伝えてきた子も憎たらしい。
まあ、その時の話の内容に対して頭が真っ白になっていて伝えた子などいちいち誰か覚えてないのだが。

愚痴?
絵理が?
不満など無かったはずだが。それ以上深く聞くのはあたしがイヤだったので、内容までは
聞くのをやめた。
とりあえず本人に聞いてみることにした。

メールで言おうとしたけどメールはお互いの顔を見ることができないので直接言うことにした。
『絵理、ちょっといい?』
『いいけどぉ。どぉしたのぉ??』
いつもと変わらない様子の絵理。
やっぱりあんな噂嘘だったんだよね…。
『あたしの愚痴…言っていたって本当??噂だから嘘だと思うけど…。』
少しの間沈黙が続いた。

ねえ、どうして黙っているの?
違う、ってはっきりすぐに言ってよ。
あたしの予想とは違い、図星だったらしい。
絵理の顔が少し焦っている様だった。
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