あわ玉キャンディ


「...ありがとうございます!」


タクシーを降りて、再び走り出す。

歩いてる余裕なんかなかった。

一分でも、一秒でも早く逢いたい。


足がもつれて転びそうになっても、

ローヒールが脱げてしまいそうになっても、

あたしは走るのをやめなかった。




やっとのことで着いた、

霧崎さんのマンション。

ものすごく、久しぶりに感じてしまう。

ちょうど一ヵ月ぶりくらい......。

荒れた息を整えながら、そんなことを思う。


自動ドアがウィーンと音を立てて開き、あたしはエントランスホールに足を踏み入れた。

ここであの女の人と会ったんだよね。

鮮明にいろんなことを思い出してしまうのは、なぜだろう...。

慣れた手つきで、エレベーターのボタンを押した。




< 173 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop