あわ玉キャンディ


頭に、きれいな思い出ばかりが蘇る。


最初に会った日。

こっぴどく振られたあたしに、唯一手を差し伸べてくれたこと。

クールな風貌には似つかわしくない、しゅわしゅわソーダやしゅわしゅわグレープをくれたこと。


抱き締めるときの強さや、あたたかい手のひらや、優しいキスや激しいキスも。

あたしの作ったご飯を食べて、「おいしい」って言ってくれたこと。


言った覚えがないのに、あたしの誕生日に一緒に出かけてくれて、「おめでとう」って言ってくれたこと。

アクアマリンのネックレスをくれたこと。

初めて、「和花」って呼んでくれたこと。

「好き」って言ってくれたこと......。


思えば、霧崎さんはあたしにたくさんの思い出をくれてたんだっていうことに今更気付く。

霧崎さんのあぐらの中に収まって一緒にテレビを見る。

そんな、なんてことないことさえも...

すごく幸せなことだったのに...。


全部当たり前に受け入れて、気付いてなかった。

霧崎さんは、あたしのことをちゃんと想ってくれてたんだってことに――。


それなのに勝手に悲劇のヒロインぶって。

そんな最低なあたしだったのに。


メールには、『好きだよ』って...、

『ごめんな』って...。


優しすぎるよ......、霧崎さん...。




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