あわ玉キャンディ


化粧室の鏡に顔を映す。

ベースメイクをしたあとに、ピーチ色のチークとホワイトのアイシャドー。

仕上げにベビーピンクのグロス。

たったそれだけ、時間にすると約15分。

楓に比べたら、良くてナチュラルメイク。

悪くて手抜きメイク。


...もっと化粧した方がいいのかな。


そう思ってバッグの中のポーチを開いてみるけど、化粧道具が少なすぎて。


「...はぁ。」


またひとつ、ため息をついた。


楓には悪いけど、帰らせてもらおうかな。

どうせ話題には乗り切れないしね。



でも、ここで帰ったら完全に霧崎さんには会えないよね...


...グッバイ、あたしの恋。




テンションがガタ落ちしながらも、化粧室を出る。

下げた視界に黒のブーツが映った瞬間、足を止めた。



「......。」


おそるおそる見上げた先にいたのは、

あたしを見下ろす霧崎さんだった。






< 23 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop