楽園の炎
「わたくしが作ったのよ! 思ったより、上手くできたわぁ」

嬉しそうに言うナスル姫は、よっぽど嬉しいのか、顔の前で手を組んで、ぴょこんぴょこんと飛び跳ねている。
見るとその手には、小さな火傷の痕まである。

「一体、姫様ともあろう者が、こんなところで、何をしているのです?」

事態を呑み込めない朱夏に、ナスル姫は、えへん、と胸を張った。

「見ればわかるでしょ。お菓子作りよ。ほら、この焼き菓子、これならわたくしも作れるって言ったでしょ。朱夏、元気ないし、あんまりご飯も食べてないって聞いたから、わたくしにできることをしてあげようと思って」

朱夏は大皿に目を落とした。
ごちゃごちゃと積み上げられた焼き菓子は、初めにもらったものとは同じものとも思えない程の有様だ。

「わざわざ、姫様自ら・・・・・・」

「ほんとはね、作れるといっても、実際作ったのなんて、ほんとに数える程度なの。この旅人さんとお茶してるときに、その話をしたら、作らないでいい身分に甘えて作らないから、いつまでも作れないんだって言われて。はっとしたのよ」

でもこの通り、ちゃんとできたと胸を張るナスル姫は、本当に可愛らしい。
できたものは歪で、自身も粉まみれだが、相変わらず嬉しそうだ。
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