楽園の炎
「これが、あたしのリンズよ。何か変?」

小さな顎を上げて唇を尖らせる朱夏がまとっているリンズは、まず厚めの布を胸から太股まで巻き付け、その上に薄い布を肩からかけて、腰で縛っただけの、いうなればリンズの基本形だ。
しかも、太股までの下の布には、腰の下まで切り込みが入っている。

侍女は重ねて何か言おうと口を開いたが、結局諦めたように、眉間に深く皺を刻んで口を閉ざした。

「葵王様。さぁ、いつまでもこのような小娘と戯れていないで、お衣装と傷の手当てをしなくては」

ぷいっと朱夏から顔を背けて、葵を促す侍女の手を、彼は勢い良く振り解いた。

「朱夏を悪く言うな!」

叫んだかと思うと、ぱっと朱夏の手を取り、呆気に取られる侍女を置き去りに、葵は回廊を走り出した。

しばらく走り、建物を抜けた辺りで、すっかり息の上がった葵が、うっかり躓き、その場に転がる。
手を繋いでいたため、朱夏も引っ張られるように、葵と一緒に転がった。

「痛た・・・・・・」

起き上がった朱夏は、ふにゃ、と泣き出した葵の頭をくしゃくしゃと撫で、衣装についた汚れを払ってやった。
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